<寄稿> 防災・減災を願って

龍翁の独り言(第47号)「防災・減災を願って」

長年、テレビ(ドキュメンタリー番組制作)の仕事をしてきた翁は、“テレビ・ラジオ・新聞など公的情報伝達機関は、(広告を除く)一般的情報提供内容において特定の政党・宗教・団体・企業・現存個人などを過剰に評価宣伝したり誹謗攻撃してはならない”いわゆる放送倫理が骨の髄まで沁み込んでいるから、講演会など公(おおやけ)の場では、それなりに配慮して言葉を選んでいる。が、「独り言」は翁独自のエッセー。読者各位にヒンシュクをかわない範囲で自由気ままに書けるのだから、気が楽だ。とりわけ、世のため人のためになる(と翁が思える)話なら、何の遠慮も躊躇もなく、読者各位に紹介できる喜びも感じる。今号は、新しく発足したNPO法人の、思いっきりPR版だ。

朝日新聞(5月25日朝刊)など数紙に掲載されたのでご存知の読者もおられると思うが、今年のはじめ、龍翁の独り言(第43号)「大地震」で書いた『NPO法人・日本災害情報サポートネットワーク(J-DINS)』が本格的にスタート。先日、発足総会が開かれた。理事長の渡辺 実氏(防災・危機管理ジャーナリスト)、副理事長の加賀美靖彦氏(ジャーナリスト、元TBSロサンゼルス支局プロデューサー、アメリカ名“チャーリー”、翁を理事に引っ張り込んだ人物)のほか、FAネットワークシステム・画像伝送システム会社幹部、被災地・開発途上国・難民キャンプで情報通信支援を行なっている団体幹部、危機管理情報のエキスパート会社社長、危機管理に関する出版・コンサルティング会社社長、アマチュア無線の団体幹部、有線テレビ・ラジオ放送事業会社幹部、インターネット会社幹部、学者など、まずは集まったこの多彩な顔ぶれに驚く。

このNPO法人が正式に認可されるまでの間でも、渡辺理事長の活動は目覚しかった。昨年11月の北海道竜巻、今年3月の能登半島地震、いずれも当日現地に飛び、情報収集、写真撮影、テレビ・ラジオ出演と多忙を極めた。その間、NPO立ち上げ準備にも奔走した。しかも短期間で前述のそうそうたるメンバーを仲間に引き入れたのだから、その手腕たるやお見事・・・と言うより彼の(防災・危機管理に取り組んできた)多くの実績と温厚な人柄(人望)が、この強固な理事会を作り上げた、と言えるのかもしれない。翁が感心したのは、ここに集まった人たちは一様に(防災・危機管理に関する)グローバル意識の持ち主ばかりである、ということだ。NPO法人だから金銭的利益は得られない(むしろ手弁当的)ボランティア団体であるにもかかわらず、「私は」、とか、「我が社は」、の利害を超えて、この法人は真に日本の防災・減災の実効をあげるために何をなすべきか・・・

1.防災・減災のための常時情報発信、2.災害発生時を想定しての情報支援活動訓練、3.災害発生時の情報支援活動戦略など初年度事業計画について熱心に語り合う。その様(さま)は、実に頼もしく美しい。

渡辺理事長は今年4月に「高層難民」を出版、さらに5月から毎週金曜日『フジサンケイ ビジネスアイ』で「減災に挑む」が連載されている。「“12秒後に、震度5強の揺れが襲ってきます“という情報が発表されたら、さあ、あなたはどうしますか?」の書き出しに始まる第1回目は、気象庁が今年の9月から本格的に運用を開始する『緊急地震速報』についてであった。それによると、12秒の時間があれば、①自宅や会社にいて机の下にもぐったりして最低限の身の安全を図ることが可能、②危険物を取り扱っている工場では、即座に作業をストップさせ、2次災害を未然に防ぐことが可能、③走行中の電車や車輌は、減速したりストップして地震による脱線事故などを防止することが可能・・・など、具体的なアドバイスに触れている。この12秒を、”たったの12秒“と思って、ただ立ちすくむか、”12秒もある“と思って冷静に行動するか、生命・財産の明暗を分ける”12秒の使い道“を渡辺氏は問いかけている。

ところで龍翁は、このNPO法人の理事の一員として何ができるかを考える。全国各地の放送メディア、アマチュア無線団体との連携、自治体との協調という文字通りのネットワークづくりは、法人としてすでに取り組んでいるところであるが、大事なことは、国民一人ひとりの“防災・減災”に対する意識の高揚と、実践的プラクティス(訓練)である。頭でわかっていても、有事の際、体が動かなければ何もならない。そこで、“防災・減災プラクティス”のシステムをどのように構築し、実践するかの戦略・戦術を立てなければならない。もう一つ重要な課題は、地域企業や学校、神社・寺社などとのタイアップである。とりわけ、「CSR(企業の社会的責任)」が叫ばれるようになっている昨今、地域企業は、CSRプログラムの中に、万一、当該地での災害発生時、わが社は地域住民(被災者)のために何をなすべきか、の防災・減災のノウハウを知り、罹災者救援活動システムを優先的に導入してもらいたい。それには、まず『日本災害情報サポートネットワーク』に参加する、そのこと自体が当該企業にとって大きなCSR効果、言い換えれば大きな社会的評価に繋がる、ということをPRしていきたい。

自然災害には地震とそれに伴う津波、台風、豪雨、豪雪、竜巻、などいろいろあるが、やはり地震が最も脅威。予想される“東海地震”は、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う歪みが解放されていないままになっているため「いつ起きても不思議ではない」と専門家は言う。また、“南関東(首都圏)地震”は、大陸プレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートが互いに接し、複雑な応力集中が生じているため「かなり切迫性を有している」と言われている。近年、災害は忘れないうちにやってくる、を肝に銘じておきたい。ニュースキャスターの筑紫哲也さんが肺ガンと診断された時、「自分だけはガンにはかからない、という根拠のない自信をもっていた」と言った。その言葉が、防災・減災対応にも当てはまる。自分だけは助かるという根拠のない安心が不運を招きかねない。「いざ、の時、どう動けるか、12秒」っと呟く、龍翁の独り言。

PROFILE : 長尾 龍

NPO法人日本災害情報サポートネットワーク 理事

株式会社東京ヴィ・ピー・アール 代表取締役会長 http://www.tokyovpr.co.jp/ 

某ホームページでエッセー「龍翁の独り言」を連載している

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